津波の恐怖 高さ数十センチでも危険!

南米チリの大地震による津波は日本にも到達したが、沿岸自治体の指示や勧告に従って避難所へ向かう人は少なかった。専門家は「東南海・南海地震がいずれ起きることを考えれば、もっと危機感を持ってほしい」と指摘する。

 

津波の力は強い ひざの高さ(40~50cm)でも立つことは困難

津波の力は強い ひざの高さでも大人が流される

高知県に津波の第1波が到達した直後の2月28日午後3時半ごろ、岡村真・高知大教授(地震地質学)は土佐市の海岸を高台から見て驚いた。サーフィンや犬の散歩をする人がいて、近くの学校ではサッカーの練習が続いていた。次第に海面が盛り上がり、隣の高知市では高さ30センチを観測。「岸壁を越えれば人や車が流されたかもしれない。実は危険な状況だった」

 同じような光景はあちこちで見られた。海上保安庁が確認しただけでも、津波警報発令中に全国各地で計約1100人のサーファーらが海に出ていたという。

 高知県の一部では全国で最も高い1.2メートルの津波が観測された。沿岸の13市町村は被害の恐れのある地域の4万1576世帯、9万1639人に避難勧告を出したが、避難所を訪れたのは約2%の1638人にとどまった。今回は地震発生から津波到達までほぼ1日かかっており、岡村教授は「事前のメディア情報で、『さほど大きな津波ではない』と思った人が多かったのではないか」とみる。

 災害対策基本法によると、市町村長は住民に危険があると判断した場合、避難を勧める「避難勧告」、より緊急度が高ければ「避難指示」を出すことができる。ただ、いずれも強制力はなく、従わなくても住民への罰則はない。

 和歌山県では和歌山市、那智勝浦町、串本町が避難指示を出したが、やはり反応は鈍かった。7753世帯、1万5千人に指示した那智勝浦町での避難者は90人だった。

 こうした状況に、「人と防災未来センター」(神戸市)の河田恵昭(よしあき)センター長は「命にかかわること。津波の怖さを認識してほしい」と話す。

 津波は通常の波とはまったく違う。海面全体が盛り上がり、巨大な水のかたまりが押し寄せてくる。そのため「条件によっては、高さ20センチ程度でも人が押し流される」(気象庁)という。破壊された家屋や木などが一緒に流れてくる恐れもある。

 政府の中央防災会議のまとめでは、四国沖などを震源とする東南海・南海地震が起きれば、20分ほどで高知県や和歌山県に津波が押し寄せ、最高で12メートルにもなる。各地の津波による死者は計約8600人と想定される。

 東南海・南海地震が今後30年以内に発生する確率は60~70%程度。河田センター長は「今回の経験から『避難しなくても大丈夫』という意識が広まると怖い。自治体は『東南海・南海地震ではこうはいかない』と住民へ伝えることが重要だ」と話す。

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