政府の中央防災会議は、駿河湾から四国沖に震源域がつらなる「東海」「東南海」「南海」の3地震が同時発生した場合の都府県別被害想定を4月に公表した。9月には、この想定に基づき広域の総合防災訓練を実施する。3地震が同時発生すると、関東以西の27都府県に被害が及ぶ。新たな広域型の防災計画策定が急務だ。
東海、東南海、南海地震は、駿河湾から四国沖にかけての海底に延びる南海トラフ(浅い海溝)を震源とするマグニチュード(M)8前後の海溝型巨大地震だ。フィリピン海プレート(岩板)が陸側プレートの下に沈み込み、プレート境界に歪(ひず)みが蓄積され、100~150年周期で陸側プレートが急激に跳ね上がることで発生する。
中央防災会議は2003年、東海地震と東南海・南海地震については都府県別内訳を含めた被害想定を公表した。3地震同時発生のケースは全国の被害総数の公表にとどめ、都府県別の被害は未公表だった。
改めて都府県別の被害想定が公表されたことについて、東海地震の判定会(地震防災対策強化地域判定会)委員を務める東大地震研究所の平田直所長は「3地震同時発生の切迫性が高まり、各自治体に、より具体的な防災計画策定を促すことが背景にある」と解説する。
想定は、風速15メートルで午前5時に3地震が同時発生した場合の建物倒壊や火災、津波などによる死者数と全壊建物数を試算した。
最も被害が大きい静岡県は死者8100人、建物全壊23万棟で、高知、和歌山、愛知、三重、徳島の各県も死者数は千人を超える。
都府県ごとの被害は、東海地震と東南海・南海地震による被害の大きい方と同規模か、それをやや上回る程度だが、3地震が同時発生すると東京、大阪、名古屋を含む関東以西の大都市圏が一斉に被災する。超広域災害となるため、近接自治体からの救援も期待できない。
政治、経済の中枢と日本の大動脈が受ける被害は、1995(平成7)年の阪神大震災よりも、はるかに大きい。にもかかわらず、国の地震対策大綱や地震防災戦略はこれまで、3地震の同時発生を前提としていなかった。
南海トラフの前回の活動は終戦をはさんだ1944(昭和19)年の東南海地震と2年後の南海地震。このとき、東海地震の震源域が割れ残ったため、「いつ起きてもおかしくない」とされる東海地震を中心に日本の地震防災態勢が構築された経緯がある。
しかし、過去に東海地震が単独で起きた記録はない。昭和の活動の前は、1854(安政元)年に東海・東南海地震の32時間後に南海地震が発生。その前の宝永地震(1707年)は東海、東南海、南海の震源域が同時に動いたと考えられている。
地震調査研究推進本部の長期評価では、今後30年以内の発生確率は、東南海地震が60~70%、南海地震は60%程度としている。
「いつ起きてもおかしくない」とされる東海地震は、参考値として87%の発生確率が公表されている。昭和の活動から約65年が経過し、東南海、南海の切迫度が東海地震に近づいた。多くの研究者が次の活動では同時発生を想定すべきだと指摘する。
平田所長は「被害が超広域に及ぶことを前提に、新たな防災計画を国や自治体が連携して立てることが急務だ」とコメントを残している。

3地震同時発生の被害予測