近い将来に発生が懸念される東海地震や東南海地震では、長周期地震動と呼ばれる大きく長い揺れが超高層ビルなど大都市圏の巨大建造物を襲うとされています。政府の地震調査委員会がこの9月に公表した「長周期地震動予測地図」(試作版)では、東海地震発生時に首都圏が特に大きな影響を受け、大きな揺れが長く続くことが示されました。高層ビルの上層階は避難や救助活動が困難で、深刻な都市型災害となる恐れもあります。
≪ビルを襲う“荒波”≫
地上にいる人がガタガタ、グラグラと感じる通常の揺れは、周期(1往復の揺れにかかる時間)が0・5~2秒程度。これに対し、周期がおおむね3秒以上の揺れが長周期地震動と呼ばれる。荒波にもまれた船内のように大きな揺れが建物によっては数分間以上も続く。
一戸建てや中低層ビルよりも、超高層ビルや石油タンク、レインボーブリッジなどの長大橋のような大規模建造物への影響が大きいのが、長周期地震動の特性。建造物の規模が大きいほど揺れやすい波長(固有周期)が長いからで、地震の周期と建物の固有周期が一致すると「共振」によって揺れが増幅する。
長周期地震動はマグニチュード(M)7程度を超える規模の大きな地震で生じる。2003年の十勝沖地震(M8・0)では、震源から約250キロ離れた北海道・苫小牧で石油タンク火災の一因となった。5年前(04年)の新潟県中越地震(M6・8)では、震源から約200キロ離れた東京都庁(新宿区)などでエレベーターが緊急停止。長周期地震動対策の必要性が浮き彫りになった。
≪コピー機が“暴走”≫
兵庫県と防災科学技術研究所の共同実験で高層ビルの30階の室内の揺れを再現すると、固定されていない家具やロッカーなどが倒れ、キャスターがついたコピー機が室内を暴走し壁に穴を開けるなどした。周期が長いからといって「ゆっくりとした揺れ」などと侮ることはできない。纐纈一起・東大地震研究所教授(強震動地震学)は「揺れが大きいとビルの中だけ水道や電気、ガス管が破損し、高層の部屋は孤島のようになる。寝る場所にも気をつけるべきだ」と警鐘を鳴らす。
地震調査委が試作した「長周期地震動予測地図」では東海地震のほか、東南海地震、宮城県沖地震を想定。周期5、7、10秒の3パターンで、揺れの強さや継続時間などの地域分布を明らかにした。長周期地震動の特性が顕著だった東海地震では、震源付近と同程度の強さで関東平野の広範囲を長周期の揺れが襲い、固有周期が7秒の超高層ビルなどは、2秒弱で約1メートルの速さで揺れると予測された。首都圏ほど広範囲ではないが、大阪平野や濃尾平野も長周期地震動の影響を受ける。
≪被害は未知数≫
東京、名古屋、大阪を中心とする大都市圏の超高層ビルは、M8級の大地震がもたらす長周期地震動の洗礼を受けていない。同教授は「長周期地震動は思いがけない遠方から大きな揺れが来る。しかも被害は想像の領域で実際に何が起こるか分からない。予測地図で自分の場所での揺れを確認しておいてほしい」と話す。
超高層ビルの上層階に住居や職場がある人は、どう対処すればいいのか。
通常の地震対策と同様に、家具などの固定は被害軽減に直結する。低層階と違って、エレベーターが止まり避難できない状況を想定し、安全確保策を考えておく必要がある。また、東海地震の場合、長周期の地震波は約1分後に首都圏に到達する。震源が遠い大地震のときには、緊急地震速報などを活用して長周期の揺れに備えることは可能だ。

都市部で揺れが大きくなります(赤色部分)