津波に襲われた港町に追い打ちをかけるように、陸と海から火の手が迫った。宮城県気仙沼市鹿折(ししおり)地区。津波直後に発生した火災に、夜になって港の燃料タンクから漏れた油に引火した海上火災が加わり、一帯は夜通し炎に包まれた。あれから半年余。消防関係者は「津波では助かったのに、火災で命を落とした人もいたはず」と肩を落とす。
◇住宅街から煙
3月11日。地区の北側に広がる市街地に住む漁労長、前田勝夫さん(72)は自宅3階の窓から見える一筋の白煙に気づいた。数分前に襲った津波で、壊れた家や車が2階の高さまで押し寄せた。煙が見えたのは、助けを求める隣家の住民に手を貸していた時だった。
別の場所からも白煙が上がり、やがて炎に変わる。中学に進学する孫のために買いそろえた制服やカバンを抱え、妻の富美子さん(67)と家を飛び出した。後ろを振り返る余裕はなかった。
「この街は終わりだ」。午後7時半すぎ。鹿折の市街地に最も早く着いた気仙沼消防署の当直司令、伊藤大志(たいし)さん(47)はがくぜんとした。一帯は火の海。がれきで消火栓は埋もれ、足の踏み場もない。ガスボンベが火を噴き...